不祥事・デマ・事件

NHK会長が軍艦島の元島民に謝罪。自局で報じられなかった経緯と論点

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NHKは自社会長が元島民に謝罪したというニュースを、自社では報じませんでした。舞台は長崎県の軍艦島(端島)です。稲葉延雄会長は2025年3月、過去に放送した映像の扱いについて元島民に謝罪しましたが、この謝罪自体はNHKのニュースで伝えられませんでした。2026年2月には自民党の会合でこの対応が問題視され、NHK側が説明を求められています。本記事では、この一連の経緯を整理します。

そもそもの発端 ―「緑なき島」の映像とは

1955年放送の短編記録映画

「緑なき島」は、NHKが1955年(昭和30年)に放送した、軍艦島(端島)を舞台にした短編記録映画です。炭鉱で働く人々の暮らしを、防護具や坑内灯を身につけない状態で撮影した映像などを含めて伝えていました。

韓国側が「戦時中の強制労働」の証拠として使用

この映像は後年、韓国側から「戦時中の朝鮮半島出身労働者に対する非人道的な強制労働」を示す証拠として紹介されるようになりました。しかし、元島民や産業遺産に関する研究者らは、この映像が撮影されたのは戦後10年が経過した1955年であり、戦時中の労働実態を撮影したものではないと指摘しています。

なぜ問題視されたのか

2015年、軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」がユネスコの世界遺産に登録されました。この前後から、映像の撮影時期や内容の妥当性をめぐって、元島民や自民党の一部議員から疑問の声が上がるようになりました。2023年6月には自民党の外交部会などが合同でヒアリングを開催し、映像のフィルム自体が「昭和30年製」であることが確認されたと報じられています。

2024年12月には、NHK側も映像の扱いについて一定の問題があったことを認める動きを見せ、2025年1月にはNHK会長が元島民への謝罪を検討する意向を示したとされています。

2025年3月、稲葉会長が元島民に謝罪

産経新聞の報道によると、稲葉延雄会長は2025年3月、元島民に対し次のように謝罪したとされています。

「名誉を傷つけ、つらい思いをさせ、大変申し訳ない」(稲葉延雄会長、産経新聞の報道より)

ただし同紙の報道では、この謝罪に至る過程で、NHK側が元島民との面談を取材なしで行うよう打診したことが、かえって元島民側の感情を刺激したとも伝えられています。元島民側は4年にわたってこの問題を訴え続けてきたとされ、ようやく実現した謝罪が、当事者にとって納得のいく形ではなかった可能性がうかがえます。

なぜ「謝罪」をニュースにしなかったのか

最大の争点は、NHKが自社会長によるこの謝罪を、自社のニュース番組やサイトで報じなかった点です。2026年2月、自民党の「日本の名誉と信頼を守る特別委員会」の会合でこの点が追及され、NHKの井上次期会長は次のように説明したと報じられています。

「編集権に基づき判断」「NHKの自主自律の中での判断」(井上次期会長、産経新聞の報道より)

つまり、何を報じるか・報じないかはNHK自身の編集判断であり、外部から指図されるものではない、という理屈です。ただしこの理屈は、報じない理由の説明にはなっても、「なぜ報じない判断をしたのか」という核心には答えていません。会長自身の謝罪という、NHKにとって不都合な情報が、NHKの編集権によって視聴者に伝わらなかった、という構図そのものが批判の対象になっています。

他局・新聞は報じている

報じていないのはNHKだけで、この謝罪自体が世の中に一切伝わっていないわけではありません。日本テレビ(日テレNEWS NNN)は「NHK会長『軍艦島』元島民に直接謝罪 制作映画の『事実と異なる映像』めぐり」として通常のニュースで報じており、産経新聞は社説(「主張」欄)でも「NHKと軍艦島 会長の謝罪なぜ」として取り上げ、報じないこと自体を問題視しています。他局・新聞が普通に報じている出来事を、当事者であるNHKだけが自社のニュースで扱わなかった、という点が対比として際立ちます。

自民党「護る会」の反応

自民党内でこの問題を追及してきた議員のグループは、取材なしでの面談を打診したNHKの対応について、「尊大でメディアとして理解し難い」と批判したと報じられています。過去に別の企業(フジテレビ)が非公開の場での会見対応を批判された事例になぞらえる指摘も出ており、当事者への向き合い方そのものが問題視されている形です。

経緯を時系列で見る

NHK軍艦島映像問題 ― 主な経緯
1955年NHKが短編記録映画「緑なき島」を放送
2015年軍艦島を含む産業遺産がユネスコ世界遺産に登録
2022年10月元島民の会がクラウドファンディングを開始、目標500万円に対し867万円超を集める
2023年6月自民党のヒアリングで、映像フィルムが「昭和30年製」と判明
2024年東京の民事調停で、NHKが映像の出所を「確認できない」と認め、今後の放送・配信をしないと約束
2024年12月NHKが映像の扱いに問題があったことを一定程度認める
2025年1月NHK会長が元島民への謝罪検討の意向を示す
2025年3月稲葉会長が元島民に謝罪(NHKはニュースで報じず)
2026年2月自民党の委員会がこの対応を追及、井上次期会長が説明
2026年7月16日元島民の会が東京で独自制作のドキュメンタリー映像を初公開(韓国語・英語版も)

今も解決していない ― 独自の検証映像制作へ

NHKは「確認できない」とは認めたが

長崎新聞の報道によると、2024年に東京で行われた民事調停で、NHKは問題の映像について出所を「確認できない」と認め、今後の放送・配信をしないと約束しています。ただし、この対応は個別の映像に関するものであり、「緑なき島」という番組そのものの内容を正式に訂正したわけではありません。

2022年から続くクラウドファンディング

「真実の歴史を追求する端島島民の会」は2022年10月、独自の検証映像を制作するためのクラウドファンディングを実施し、目標の500万円を大きく上回る867万円超を集めました。産経新聞の報道では、この活動について元島民側から「(本来は)NHKが作るべきだが…」というコメントも伝えられており、当事者であるNHK自身が検証番組を制作しないことへの不満がうかがえます。

2026年7月、新作ドキュメンタリーを東京で初公開

長崎新聞によると、2026年7月16日、田中実男氏が代表を務め72人の元島民で構成する「真実の歴史を追求する端島島民の会」は、東京・千代田区の全国町村会館で新たなドキュメンタリー映像を初めて公開上映しました。韓国から世界に広がったとされる、朝鮮半島出身労働者への虐待・差別に関する「誤解」を正す狙いだとしています。副会長の中村喜一氏(88)は「日韓を分断するプロパガンダを正したい」と語ったと報じられています。この映像は韓国語版・英語版もあわせて、団体のサイト「軍艦島の真実」で公開されています。

つまり、NHK自身による正式な訂正や検証番組の制作には至らないまま、当事者である元島民側が独自に資金を集め、海外向けの発信まで行っている、というのが現状です。この問題は決着したわけではなく、今も続いています。

当事者ではなく視聴者が動く構図

本来、自局が放送した番組の内容を調べ直し、誤りがあれば正すのはNHK自身の役割のはずです。しかし今回は、映像の出所調査も、検証映像の制作・多言語化も、資金集めから公開まで、当事者ではないはずの元島民側が担っています。受信料を財源とする公共放送が自ら果たすべき検証・説明責任を、視聴者側が肩代わりしているとも言えるこの構図は、NHKが公共放送として何のために存在しているのかという、根本的な問いにもつながります。

対立する見方を整理する

論点 元島民・自民党側の主張 NHK側の説明
映像の性質戦後(1955年)撮影で、戦時中の強制労働を示すものではない当時の島の暮らしを記録したもので、朝鮮半島出身者を対象にした内容ではない
謝罪の経緯取材なしでの面談打診がかえって不信を招いた(この点への公式な反論は確認できず)
謝罪を報じない理由視聴者に伝えるべき情報を自社の都合で伏せている編集権に基づく自主自律の判断

本記事は、産経新聞や関連団体の報道・発信をもとに整理しています。当事者双方への直接取材はしておらず、引用部分は各報道機関の記事の見出し・記述に基づいています。

出典

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