日本テレビの「月曜から夜ふかし」が2025年3月、街頭インタビューで中国出身女性の発言を恣意的に切り貼りし、実際には言っていない内容を放送していたことがわかりました。BPO(放送倫理・番組向上機構)は半年以上かけて「放送倫理違反」と認定しましたが、日本テレビ・BPO・総務省のいずれも、指摘した以上の具体的な対応は確認できていません。視聴率は問題発覚後もほぼ変わらず、番組は現在も継続中です。問題発覚から現在までの経緯と、各者の対応を整理します。
街頭インタビューで何が起きたのか
2025年3月24日放送の「月曜から夜ふかし」で、新宿駅での街頭インタビュー企画が放送されました。字幕には、中国出身の女性が次のように発言したかのように表示されていました。
「あんまり中国カラス飛んでるのがいないですね。みんな食べてるから少ない。とにかく煮込んで食べて終わり」
― 放送で使われた字幕(日本テレビ「月曜から夜ふかし」)
しかし、女性は実際にはこのような発言をしていませんでした。担当のフリーディレクターが、女性が別の話題で話していた音声を切り貼りして、あたかもそう発言したかのように編集していたのです。
実際の発言とは違っていた
この放送を見た中国語圏のSNSユーザーが「発言内容がおかしいのではないか」と気づいて指摘し、それが拡散したことで問題が表面化しました。女性本人にも実際の発言と異なる旨が伝わり、日本テレビに指摘が寄せられました。
日本テレビが調査したところ、担当ディレクターが「街頭インタビューのオチが弱い」と判断し、単独で音声を組み合わせて虚偽の発言を作り上げていたことが判明しました。
この編集によって、女性はSNS上で誹謗中傷にさらされる事態となりました。日本テレビは公式サイトへのお知らせに加え、中国語でも「お詫び」を掲載しています。
日本テレビの謝罪と、広がった波紋
日本テレビは2025年3月27日に謝罪し、翌28日には公式サイトにお知らせを掲載しました。街頭インタビュー企画は一時中止され、番組制作プロセスの見直しが表明されました。
SNS上では「完全な捏造」「人種差別を助長している」といった批判が相次ぎ、「テレビ全体が信用できなくなる」という声も広がりました。この件は政府レベルでも取り上げられ、村上総務相は記者団に対し、次のように異例の苦言を述べています。
「日本テレビは国民の知る権利を満たす等の放送事業者の社会的役割を自覚し、適切に対応していただきたい」
― 村上総務相(2025年3月28日、記者団に対して)
BPOが「放送倫理違反」と認定 ― 放送から半年以上後
日本テレビは2025年5月、「再発防止の体制が整った」として街頭インタビュー企画を再開しました。そして放送から半年以上経った2025年10月21日、BPOの放送倫理検証委員会が意見書を公表し、次のように認定しました。
「VTR素材を恣意的に編集し、取材対象者が発言していない内容を発言したかのように、事実に基づかない虚偽の内容を放送した」
― BPO放送倫理検証委員会・第49号決定
BPOは、制作幹部の監督責任の不足、不正を防ぐ仕組みの欠陥、「笑い優先」の組織風土、他国の文化への配慮不足も併せて指摘しました。
経緯を時系列で見る
各者の対応を並べてみると
この件は、日本テレビ・BPO・総務省という3者がそれぞれ問題視した点で、放送業界としては珍しく大きな話になりました。ただし、それぞれの対応を並べてみると、問題の指摘や認定を超える具体的な措置は確認できませんでした。
| 主体 | 行ったこと | 確認できなかったこと |
|---|---|---|
| 日本テレビ | 謝罪、街頭インタビューの一時中止(約2か月) | 組織としての正式な処分、番組の休止・見直し。再開後は通常通り放送継続 |
| BPO | 放送から半年以上後に「放送倫理違反」と認定 | 意見書には強制力がなく、処分権限もないため、それ以上の措置はない |
| 総務省 | 村上総務相が異例の苦言 | 行政指導など、発言以上の具体的な措置は確認できず |
担当していたフリーディレクターは番組から外れたとされていますが、日本テレビとしての組織的な処分や、番組そのものへの実質的な処分は報道からは確認できませんでした。一部では番組が2025年秋に終了するのではという観測も出ましたが、これは業界関係者による推測にとどまり、番組は現在も変わらず放送が続いています。
問題発覚後の視聴率(コア視聴率)を見ても、5月19日が3.8%、5月26日が3.6%、6月16日が4.3%と、大きな落ち込みは見られませんでした。日刊ゲンダイDIGITALは、問題発覚後も視聴率が変わらなかった点を取り上げ、やらせ問題がテレビ局に長年つきまとう背景として報じています。視聴率が維持されている以上、局側が番組の継続を選ぶのは自然な判断ともいえ、問題への対応が謝罪と制作体制の見直しにとどまった一因とみることもできます。
この件で影響を受けたのは、発言を捏造された女性だけではありません。街頭インタビューを「一般の人の生の声」として受け止めていた視聴者も、その前提を揺るがされました。BPOの意見書に強制力がなく、行政の対応も発言にとどまる現状では、再発防止の実効性は放送局自身の取り組みに委ねられています。今後の番組制作にどう反映されるのか、引き続き注視が必要です。
出典
- お知らせ(日本テレビ公式サイト・2025年3月28日)
- 第49号決定(BPO放送倫理・番組向上機構)
- 「中国ではカラス食べる」演出、日テレ「月曜から夜ふかし」に放送倫理違反 BPO「恣意的に編集」(弁護士ドットコムニュース)
- 『月曜から夜ふかし』で発言捏造「中国ではカラス食べる」、過大な「制作プレッシャー」背景か(弁護士ドットコムニュース)
- 日テレ「月曜から夜ふかし」中国出身女性のカラス発言をねつ造で大炎上 村上総務相異例の言及(coki)
- 日本テレビ『月曜から夜ふかし』で中国出身女性の発言を意図的に編集 公式サイトに中国語でも「お詫び」掲載(中日スポーツ・東京中日スポーツ)
- 『月曜から夜ふかし』インタビュー”ねつ造”…異文化理解の欠如とメディアの責任(RKB毎日放送)
- 日本テレビ社長、『月曜から夜ふかし』ねつ造問題を謝罪 街頭インタビューは当分中止(中日スポーツ・東京中日スポーツ)
- 日テレ、「月曜から夜ふかし」の不適切編集で謝罪(日本経済新聞)
- ヤラセ編集「月曜から夜ふかし」街頭インタビュー復活でも「9月終了」が濃厚なワケ(アサ芸プラス)
- 「月曜から夜ふかし」やらせ発覚も視聴率変わらず…テレビ局に長年つきまとう「やらせ問題」の根深さ(日刊ゲンダイDIGITAL)
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