2026年9月25日、訪米から帰国した北朝鮮による拉致被害者の家族会が、羽田空港で会見を開きました。その場で、幹事社を務めたTBSの記者が、家族会を「遺族会」と呼びました。「遺族」とは、亡くなった人の家族を指す言葉です。生存を信じて半世紀近く帰国を待ち続ける家族に向けて、報道機関の記者が口にしてよい言葉ではありません。しかも発言から12日が経った今も、記者本人もTBSも謝罪していません。言語道断の発言の経緯と、その後の放置を検証します。
TBS記者の「遺族会」発言とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時・場所 | 2026年9月25日、羽田空港 |
| 会見 | 拉致被害者家族会の訪米団による帰国報告会見(米国で政府高官らと面会) |
| 発言 | 質問の冒頭で「遺族会としては…」 |
| 発言した記者 | TBSテレビ報道局の塩田アダム記者(会見の幹事社) |
| 家族会の反応 | 飯塚耕一郎事務局長がXで「1社会人の常識と知識と礼節を持って取材頂きたい」と抗議 |
幹事社として、質問の冒頭で「遺族会としては」
家族会は、米国で政府高官らと面会し、拉致問題の解決への協力を求めて帰国したばかりでした。その報告の場で、記者クラブを代表して最初に質問する幹事社のTBS記者が、「遺族会としては」と切り出しました。家族会の正式な名称は「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」であり、「遺族会」という呼び方はどこにも存在しません。
飯塚耕一郎氏「1社会人の常識と知識と礼節を」
家族会の事務局長で、田口八重子さんの長男である飯塚耕一郎氏は、会見後、Xで記者の名前を挙げて抗議しました。
なお、TBS は幹事社であり塩田アダム記者からの発言。1社会人の常識と知識と礼節を持って取材頂きたい。
飯塚耕一郎氏(X、2026年9月25日)
報道によると、会見の後には北村経夫参院議員が記者に謝罪を促したとされています。
なぜ「遺族」が許されないのか
北朝鮮の「死亡」主張と日本政府の立場
北朝鮮は、横田めぐみさんら帰国していない拉致被害者について「死亡した」と主張しています。しかし日本政府は、北朝鮮が示した「死亡」の根拠には多くの疑問があるとしてこれを認めず、全ての拉致被害者が生存しているという前提で、即時帰国を求めています。
| 立場 | 拉致被害者について |
|---|---|
| 北朝鮮 | 帰国していない被害者は「死亡した」と主張 |
| 日本政府 | 「死亡」の主張を認めず、全ての被害者の生存を前提に即時帰国を要求 |
| 家族会 | 生存を信じ、帰国を求めて活動を続けている |
| TBS記者の発言 | 「遺族会」=亡くなった人の家族の会 |
表を見れば分かるとおり、「遺族会」という言葉は、意図があったかどうかに関わらず、日本政府の立場ではなく北朝鮮の主張の側に立つ言葉です。
生存を信じて待つ家族への侮辱
家族会は1997年の結成以来、肉親の帰国を求めて活動を続けてきました。その間に、親の世代の多くが再会を果たせないまま亡くなっています。それでも家族は、被害者が生きていると信じて声を上げ続けています。その家族に向かって「遺族」と呼ぶことは、彼らが守り続けてきた希望そのものを否定する言葉です。
言い間違いでは済まされない
一般人の言い間違いとは重みが違う
一般の人がうっかり口にしたのであれば、まだ理解の余地はあるかもしれません。しかし、発言したのは報道機関の記者です。言葉を扱うことを仕事にし、拉致問題を伝える立場にある人間が、当事者を前にしてこの言葉を口にしたこと自体が、あり得ない事態です。しかも記者は、記者クラブを代表して質問する幹事社でした。会見に臨む前に、相手が誰で、どのような立場にあるのかを確認しておくのは、取材の最低限の準備です。
名前を知らなかったのか、それとも
幹事社として会見に臨みながら、長年活動を続けてきた「家族会」の名前を知らなかったのでしょうか。それとも、拉致被害者はすでに亡くなっているという認識が、頭のどこかにあったのでしょうか。どちらであっても、拉致問題を取材する記者として、認識が根本からずれていたと言わざるを得ません。単なる言い間違いとして片付けられる問題ではないと、当サイトは考えます。
SNSでは「TBSは反日」との声も
噴き出した不信感
発言が伝わると、SNSでは批判が一気に広がりました。「遺族会」は一時、Xのトレンドにも入っています。投稿の中には、「TBSは反日だ」「北朝鮮寄りの認識が透けて見える」といった、TBSという組織そのものに向けた厳しい声も多く見られました。
なぜそう受け止められるのか
TBSが「反日」かどうかは、一つの発言だけで判断できるものではありません。しかし、こうした受け止め方が広がる背景ははっきりしています。拉致問題は、日本の主権と国民の命に関わる問題です。その問題で、日本の報道機関の記者が、日本政府の立場ではなく北朝鮮の主張に沿う言葉を、当事者の目の前で口にしました。視聴者が「この局は誰の側に立って報道しているのか」と不信を抱くのは、当然の反応だと言えます。
その不信を晴らせるのは、TBS自身の謝罪と説明しかありません。しかしTBSは、今も沈黙を続けています。
発言から12日、記者もTBSも謝罪なし
会見
いまだに公表されない謝罪と説明
発言から12日が経った現在も、塩田記者本人からも、TBSからも、家族会への謝罪や発言についての説明は公表されていません(当サイト調べ、2026年10月7日時点)。TBSの公式サイトにもお詫びは掲載されておらず、TBSが取材に答えたとする報道も見当たりません。会見の後には北村経夫参院議員が記者に謝罪を促したとされていますが、記者がそれに応じたという情報もありません。
同じ週の社長会見ではパワハラを謝罪
TBSは、発言から5日後の9月30日に社長の定例会見を開き、ドラマ「VIVANT」の監督によるパワハラ問題について謝罪しています。自社の制作現場の問題については社長が頭を下げた一方で、拉致被害者の家族に向けられた自社の記者の発言について、社長が説明したという報道は見当たりません。
当事者の家族が名指しで抗議し、SNSでも大きな批判が上がっているにもかかわらず、記者もTBSも口を閉ざしたまま。これは放置と言うほかありません。
産経新聞は記者コラムで批判
産経新聞は、「拉致被害者家族は『遺族』ではない 言い間違いでは済まない言葉の『重さ』」と題した記者コラムを掲載し、この発言を取り上げています。同じ報道機関の記者からも、言い間違いでは済まないと指摘される発言だったということです。
拉致問題を伝える報道機関の責任
拉致問題は、被害者の帰国を待つ家族にとって、今も続いている現在進行形の問題です。報道機関は、家族の声を社会に届け、問題を風化させない役割を担っています。その報道機関の記者が、家族の前で「遺族」と口にしたことは、家族への侮辱であると同時に、報道の信頼を自ら損なう行為です。
それにもかかわらず、記者もTBSも、いまだに謝罪も説明もしていません。TBSは、家族会に直接謝罪したうえで、なぜこのような発言が出たのかを検証し、視聴者に説明すべきです。沈黙を続けることは、発言そのものと同じくらい、家族を傷つけ続けることになります。

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