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不法滞在を描いたNHK炎上ドラマ「やさしい猫」。原作者と杉並区長の関係

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2023年にNHKで放送された土曜ドラマ「やさしい猫」は、オーバーステイ(不法残留)状態となったスリランカ人男性と日本人の母娘が家族になろうとする物語で、放送前から「不法滞在を正当化している」と批判を集めました。その原作者である作家・中島京子氏は、2026年6月の杉並区長選挙で、現職・岸本聡子氏の選挙公報に応援者として名を連ねています。本記事では、ドラマの内容と炎上の経緯、原作者の経歴、そして杉並区長選での応援と岸本氏を支援してきた政党までを、公式資料をもとに順に整理します。

NHKドラマ「やさしい猫」のあらすじとキャスト

「やさしい猫」は、2023年6月24日から7月29日までNHK総合の「土曜ドラマ」枠で放送された全5回のドラマです。原作は中島京子氏の同名小説で、優香さんが主人公ミユキを、伊東蒼さんが娘マヤを、オミラ・シャクティさんがスリランカ人の青年クマラを演じました。

あらすじ(結末まで)

シングルマザーで保育士のミユキは、震災ボランティアで出会ったスリランカ人の青年クマラと東京で再会し、娘のマヤとともに3人で暮らし始めます。クマラの勤め先の自動車修理工場が倒産したことで結婚は一時棚上げとなり、その後、婚姻届を提出した直後に、クマラは警察の職務質問をきっかけに入管施設へ収容されます。オーバーステイを理由に退去強制を命じられ、口頭審理では偽装結婚を疑われます。

一家は弁護士の助けを借りて、退去強制の裁決取り消しと在留特別許可を求めて国を相手に裁判を起こします。最終回では、クマラが在留資格を得て、家族として新たな一歩を踏み出す結末が描かれました。

2026年秋には舞台版が九州で巡演中

原作は2024年に劇団民藝によって舞台化されており、2026年9月15日から10月20日にかけては、九州各地の市民劇場の主催で巡演が行われています。

「やさしい猫」はなぜ炎上したのか

番宣の段階から「不法滞在の正当化」と批判

NHK公式アカウントのPR投稿

批判のきっかけとなったのは、2023年6月9日にNHKドラマの公式X(旧Twitter)アカウントが投稿した番組PRでした。複数のメディアやブログが紹介したところによると、PR映像には「幸せが突然奪われたのは、彼が外国人だったから」という趣旨のコピーが使われていました。この投稿は現在、X上で表示されなくなっています。

放送前から相次いだ反論

この投稿には、「幸せが奪われたのは外国人だからではなく、不法滞在だったからだ」という反論が相次ぎました。ガジェット通信は、放送前の段階で「オーバーステイした側に非があるのでは」「違法行為を夫婦愛でごまかしている」といった声がネット上で上がり、著名人からも批判が出ていると報じています。

放送開始後も続いた批判

放送が始まってからも議論は続きました。言論サイトのアゴラは、ドラマが不法滞在を続ける方法を具体的に示しているという批判がネット上で広がっていると報じ、結婚すれば自動的に配偶者としての在留資格が得られるかのような描写は実際の制度と異なる、とする指摘も紹介しています。

オーバーステイは入管法違反

批判の前提となっているのは、オーバーステイそのものが法律違反であるという点です。出入国管理及び難民認定法(入管法)は、在留期間の更新や変更を受けずに期間を過ぎて日本に残留することを、刑事罰の対象としています。

次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(第5号)在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に残留する者

出入国管理及び難民認定法 第70条第1項

ドラマの中でクマラは、裁判を経て在留資格を得ます。在留特別許可は法務大臣の裁量によって例外的に認められるもので、結婚したからといって当然に在留が認められる制度ではありません。

改正入管法の成立直後に放送された

批判が大きくなった背景には、放送のタイミングもあります。2023年は、難民認定申請中の送還停止に例外を設けることなどを柱とした入管法改正案が国会で審議され、賛否が大きく分かれた年でした。ドラマの制作発表は審議中に、番組PRの投稿は法案成立と同じ日に、放送開始は成立の約2週間後に行われています。

日付(2023年) 入管法改正 ドラマ「やさしい猫」
3月7日改正案を閣議決定—
3月16日—優香さん主演でのドラマ化を発表
5月9日衆議院で可決—
6月9日参議院本会議で可決・成立NHKドラマ公式アカウントが番組PRを投稿
6月24日—第1回放送
7月29日—最終回放送

入管行政のあり方が国会で争われていたさなかに、受信料で運営される公共放送が、入管を家族の幸せを奪う側として描く作品の放送を進めていたことになります。

原作者・中島京子氏とはどんな作家か

主な作品一覧

作品 刊行 主な受賞・映像化
『FUTON』2003年デビュー作
『小さいおうち』2010年直木賞、映画化
『妻が椎茸だったころ』2013年泉鏡花文学賞
『かたづの!』2014年柴田錬三郎賞ほか
『長いお別れ』2015年中央公論文芸賞、映画化
『夢見る帝国図書館』2019年紫式部文学賞
『やさしい猫』2021年吉川英治文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞、ドラマ化

中島氏は、家族や記憶、歴史の中の個人を描く作品で知られる作家です。その中で『やさしい猫』は、現行の入管制度を正面から題材にしており、これまでの作品とは毛色の異なる一作といえます。

入管問題についての発言

中島氏は作品の外でも、入管行政について発言しています。婦人公論に掲載された生活困窮者支援に携わる小林美穂子氏との対談(2021年11月掲載、ドラマ化に合わせて2023年7月に再配信)では、入管施設での被収容者の扱いや、在留資格を失ったことで家族が引き裂かれる現状を問題として取り上げています。

中島京子氏と杉並区長・岸本聡子氏の関係

2026年杉並区長選の選挙公報で応援者に

2026年6月28日に投開票された杉並区長選挙で、杉並区選挙管理委員会が発行した選挙公報を確認すると、現職の岸本聡子氏の欄にある「応援します!」の枠に、中島京子氏の名前が「小説家」の肩書で掲載されています。

2026年杉並区長選挙の選挙公報。岸本聡子氏の欄の応援者に中島京子氏の名前がある
出典:杉並区選挙管理委員会「杉並区長選挙 選挙公報(令和8年6月28日執行)」より(他候補の欄は編集部でモザイク処理)

同じ枠には、中島氏のほか、小説家の平野啓一郎氏、保坂展人・世田谷区長、柴崎光子・埼玉県和光市長、青野慶久・サイボウズ代表取締役社長の名前が並んでいます。

岸本聡子氏を支援した政党

岸本氏は国際政策NGOでの活動を経て、2022年の杉並区長選挙に無所属で立候補し、現職の田中良氏(自民党・公明党が支援)を187票差で破って初当選しました。2026年の選挙では、自民党推薦の大和田伸氏らを破って再選しています。2回の選挙で岸本氏を支援した政党は次のとおりです。

選挙 岸本氏を支援した政党 結果
2022年推薦:立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社民党、杉並・生活者ネットワーク、緑の党グリーンズジャパン、新社会党など初当選(76,743票)
2026年自主支援:日本共産党東京都委員会再選(106,487票)

2022年の推薦政党のうち、立憲民主党は同党の公式サイトで確認でき、その他の政党はWikipediaの記載によります。2026年に共産党以外の政党がどのような形で関わったかは、今回確認した公式資料からは確認できませんでした。

NHKドラマから杉並区政までのつながりを整理

ここまで確認した事実を、時系列とあわせて一つの表にまとめます。

段階 確認できた事実 時期
原作中島京子氏が入管制度を題材にした『やさしい猫』を新聞連載・刊行2020〜2021年
区長選①岸本聡子氏が立憲・共産・れいわ・社民などの推薦で初当選2022年6月
NHKドラマ改正入管法の成立直後に放送。不法滞在の正当化との批判が相次ぐ2023年6〜7月
区長選②中島氏が岸本氏の選挙公報に応援者として掲載。共産党は岸本氏を自主支援2026年6月

不法滞在を肯定的に描いたとして批判されたNHKドラマの原作者が、野党各党の推薦で当選し、2026年には共産党が自主支援した区長の応援者として、選挙公報に名前を載せていた。今回確認できたのは、こうした事実のつながりです。

一方で、原作の連載は2020年から2021年にかけてであり、中島氏の区長選での応援が確認できたのは2026年です。作品の内容と区長選での応援との間に直接の因果関係を示す資料はありません。この事実をどう受け止めるかは、読者それぞれの判断に委ねたいと思います。

出典

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